モニタリングサイト1000里地里山


モニタリングサイト1000は、「ある場所(サイト)の自然環境の変化を長期にわたって同じ方法で観測し続ける(モニタリング)」環境省プロジェクトです。観測により、いちはやく自然環境の劣化を察知し、保全に役立てることが目的です。このプロジェクトのうち、市民が中心になって里山生態系を観測するのが「モニタリングサイト1000里地里山」です(日本自然保護協会が統括)。

この度、茨城県水戸市成沢町の里山がモニタリングサイトに採択され、観測を開始することになりました。僕は植物を対象に研究をしていますが、このプロジェクトでは「植物相」ではなく「植生図」という調査を担当します。(前者は高い植物同定能力が必要とされるため、僕には困難。後者は主にマップ作成なので、足と少々の知恵があればできそう。)この調査を始めたころは、「植生図」ではなく「人為的インパクト調査」という名称だったのですが、いつの間にか変更されていました。「人為的インパクト調査」だと何をやればいいのかわかりにくいとか、人気がなくてやる人があまりいないとかで、変更することになったというような話を聞きました。たしかに、昆虫や鳥のエンスージアストがたくさんいるのに比べると、マップ作成なんて地味でやりたいと思う人は珍しいのかもしれません。でもまあ、これはこれで、やってみると面白いと思いました。例えば、スギ林の中を歩いていたときに、ある区画だけ周りのスギ林と様子が違うところがありました。テニスコートくらいの広さの場所で、半分くらいは背丈の低いスギ、のこり半分は背の低い草本類が生えていました。足を踏み入れてみると、土の様子も周囲と違い、ふわふわとしていて、湿原のコケ群落を歩いているようでした。後に、土地の人から「その場所には10数年前まで豚舎があったと思う」ということをお聞きしました。豚舎があったことと、その不思議な植生の因果関係はわかりませんが、面白いなと思いました。廃墟を探訪する楽しみに近いのかもしれません(僕はそんなに廃墟好きではありませんが)。



現在、このエリアは水田とスギ・ヒノキ林、住宅地が多くを占めています。

ダイズ、サツマイモなどの畑地も多く、のどかな田園地帯と言えそうです。

しかし、地元の方に聞くと、農業をやる若者が減り、放棄地が少しずつ増えているそうです。これは、放棄された水田に、アレチウリ、カナムグラ、クズが繁茂してしまった場所です。

少しずつ、ソーラーパネルも増えています。

以前、このページに「いっしょに観測をしてみたい素人の方、野山を歩きまわりたい方、自然保護のお手伝いをしてみたい方がいましたら、ご一報ください」と書きましたが、誰からも声がかかりませんでした。調査は今夏で一区切りつきましたので、しばらくはやらないと思います。こういったモニタリング調査は、あまり短いスパンでやっても変化が小さいので、面白くないと思うので。次は5年後か、10年後くらいかな。(2021年、夏)


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