生物季節モニタリング


生物の状態が季節によって変化する現象(春になるとサクラが開花する、夏になるとミンミンゼミが鳴き始める、秋になるとカエデが紅葉する、など)をフェノロジー(生物季節現象)といいます。こうした季節現象は、人々の生活情報のひとつとして、大昔から利用されてきました。 最近、海外における長期観測結果(National Phenology Networkなど)の解析により、気候変動の進行がフェノロジーのタイミングを変えていることがわかってきました。日本では、気象庁が1953年から2020年にかけて植物34種の開花日や紅葉日、動物23種の初鳴日や初見日を調査してきました。これは大変に貴重な観測記録でしたし、気候変動という背景のなか、今後ますますその重要性が増すだろうと考えられていました。ところが、2021年から気象庁の生物季節観測が大幅に縮小されることが決まり(植物6種のみ継続)、このことがテレビや新聞でも大きく報じられました。僕も新聞でこのニュースを知り、日本は文化国ではないのかと、大変にがっかりしました。様々な学術団体など(僕が所属している日本生態学会も)が、観測継続を求める要望書を提出しました。その後どのような話し合いが行われたか知りませんが、縮小という決定は覆らなかったようです。しかし、国立環境研究所の気候変動適応センター(CCCA)の働きかけにより、全国の有志たちで協力し日本の生物季節観測をむしろ発展させていこうという動きが出てきました。茨城大学の構内には残念なことに植物が少なく(ここでは植物は非常に粗末に扱われています)、CCCAが観測対象にリストしている種が5つしか見当たりませんが、独自に5種を追加し、計10種の観測を開始しました。




実験圃場内のハナズオウ。(左)3月20日、(中)4月8日、(右)4月10日。


大学構内のフジ。(左)3月12日、(中)4月22日、(右)4月25日。


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